今回の記事では、企業経営理論の一分野である流通チャネル、物流について確認していきます。
高度化した現代社会においては、生産者と消費者との間で製品が直接取引されることは稀で、ほとんどが物流業者を経由した取引となっています。
つまり、企業サイドからすれば消費者ニーズに合致した製品を開発、生産するだけでは足りず、消費者の手元に確実に届く流通チャネルを構築することも非常に重要なことなのです。
この記事では、現代の経済活動の中で重要な要素である流通チャネル、物流に関するあれこれを紹介していきます。
診断士試験で問われる流通に関する知識はそれほど多くはありません。
この記事を通じて試験に必要な知識をしっかりとマスターしていきましょう。
目次
流通チャネルって何?どんな機能を持っている?
そもそも流通チャネルとは何を指し、どのような機能を持っているのでしょうか。
シンプルにいえば、流通チャネルとは生産者(メーカー)から消費者に至る流通経路のことをいいます。
以下が流通チャネルのイメージ図です。
また、流通チャネルには生産者と消費者の間にある時間、場所、所有権、情報、金銭などの様々なギャップを解消し、生産者と消費者とを結ぶ機能があります。
流通チャネルのおかげで、消費者は一軒のお店で様々なメーカーが生産した商品を購入することができるわけです。
また、この流通チャネルの形態は介在する業者の数によって違いが生じます。
以下の段階別流通チャネル図をご覧下さい。
このように、生産者と消費者との間に介在する業者数に応じてゼロ段階から3段階までの流通チャネルがあることを確認しましょう。
なお、介在する業者の数が多いほど、流通チャネルが「長い」と表現します。
チャネル政策を確認! それぞれの特徴を知ろう!
続いてご紹介するのがチャネル政策です。
チャネル政策とは、チャネル構築にあたってのスタンス、考え方のことで、開放的チャネル、選択的チャネル、排他的チャネルの3つの政策が存在します。
では、ひとつずつチャネル政策の内容、メリット・デメリットを確認していきましょう。
チャネル政策①:開放的チャネル政策
開放的チャネル政策とは、できるだけ幅広くチャネルを構築し、消費者に手広く商品を供給していこうというもので、販売先を限定しないことになります。
この政策が採用されるのは、日用品や食料品などの最寄品です。
メリットは販路を拡大できるために大量販売が可能になる点、デメリットは得意先の管理が煩雑化したり、得意先との強固な関係性が築きづらいといったことが挙げられます。
チャネル政策②:選択的チャネル政策
選択的チャネル政策とは、販売チャネルを一定程度限定し、その限定された範囲の流通業者に優先して製品を販売するというものです。
医薬品や電化製品の販売において用いられるチャネルとして有名です。
メリットは得意先の管理が容易となり、限定された得意先との関係性を強化しやすい点、デメリットは、選択した販路には他の競合商品も混じっているため、販売店との確実な協力体制が構築できているわけではないという点です。
チャネル政策③:排他的チャネル政策
排他的チャネル政策は、専属的、専売的チャネルとも呼ばれ、チャネルの幅を極端に限定し、その限定された流通業者に対して一定地域の専売権を与えるというものです。
自動車ディーラーや高級ブランド品、ガソリンスタンドで多く見られる形態です。
メリットはブランドイメージをコントロールしたり、アフターサービスの充実を図れる点、デメリットは販路が限定されるために、市場での露出度が抑えられる点、ひいては消費者に製品や情報がリーチしづらいという点が挙げられます。
マーケティングチャネルの類型を知る!
ここまで3つのチャネル政策それぞれの違いを確認してきましたが、チャネルを構成するメンバーの関係性の強弱という観点から分類することで、伝統的マーケティングチャネルと垂直的マーケティングチャネルの2種類に分類することもできます。
これら2種類のチャネル類型の内容について、さっそく確認していきましょう。
マーケティングチャネルの類型①:伝統的マーケティングチャネル
伝統的マーケティングチャネルというのは、チャネルを構成するメーカー、卸売業者、小売業者の関係性が緩やかで、それぞれが自律的にチャネル内で活動しているといった類型をいいます。
それぞれが自律していますので、チャネル内にリーダーはいませんし、帰属意識も低いです。
さらに、それぞれが自身の利益を優先しますので、コンフリクト(対立)が生じる可能性もあります。
また、新参者であってもチャネル内に参入しやすい構造です。
「伝統的」というワードが使用されているのは、日本の伝統的な流通チャネル類型であるからです。
マーケティングチャネルの類型②:垂直的マーケティングチャネル
続きまして、垂直的マーケティングチャネルです。略して、VMS(Vertical Marketing System)とも呼ばれます。
こちらは、流通システムが計画的に構築され、チャネル内のメンバーが統制・管理されるチャネル類型となります。
チャネル内のメンバーを統制するリーダーが必ず存在し、チャネルに対する帰属意識も高くなります。
メンバーは統制・管理されますので、チャネル内部でコンフリクトは発生しづらく、メンバー間の関係性が強固であることから、このチャネルへの新規参入は非常に困難といえます。
このVMSですが、企業型、契約型、管理型の3つのタイプに細分化されます。
企業型VMSは、ネーミングのとおりメーカー、卸、小売の一連の流通チャネルが一企業により構築されているタイプです。関係性が強固なのは明白ですね。
3つのタイプの中で最も関係性が強固なのがこのタイプです。
契約型VMSとは、チャネル内の異なる段階にある企業同士が契約を取り交わすことで、強固な関係性を構築することをいいます。
代表的な例としては、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)が契約により強固な関係性を築いているフランチャイズチェーンが挙げられます。
管理型VMSは、一企業体でもなく契約によるものでもなく、チャネル内のリーダーが積極的に管理・統制を図って、チャネル内メンバーの関係性を強化して出来上がるタイプです。
VMSの中で、最も関係性が弱いのが管理型VMSとなります。
合理的な物流戦略とは?延期・投機の理論を確認しよう!
続いて物流戦略を確認していきます。
物流とは、メーカーを起点として消費者の元に流通するまでの受注、保管、転送などの一連の流れをいいます。
この物流を効率的、効果的に推進するために、延期・投機の理論というものがあります。
延期・投機理論の「延期」とは、生産から消費に至る流れの中で製品形態の確定と在庫形成を消費の現場まで引き延ばすことで、消費者ニーズに対応した物流システムを実現しようとする考え方です。
受注生産化することで在庫を小ロット化することになります。
一方の「投機」とは、延期とは逆に製品形態の確定と在庫形成を消費現場から遠ざけて前倒しに設定し、生産効率を高めることを志向します。
こちらは、見込生産が行われますので、在庫ロットは大きくなります。
延期と投機には、それぞれにメリット、デメリットがあります。
それぞれの特徴を理解し、現状に適した物流戦略を選択することが望まれるというわけです。
合理的な物流戦略とは?サプライチェーンマネジメントを確認しよう!
最後に確認するのがサプライチェーンマネジメント(SCM)です。
SCMとは、上記イメージ図にあるように、材料の調達、生産、輸送等の流通、販売までの一連の流れについて、企業間で連携し総合的に管理する手法をいいます。
モノの流れとカネの流れを、サプライチェーン全体で共有、連携することで全体の最適化を目指すことになります。
注意したいのは、調達、生産、流通、販売といった部分毎の最適化を志向するものではないという点です。
部分最適化の和が全体最適化とイコールになるという風には考えません。
あくまでもサプライチェーン全体での最適化を志向するものになります。
まとめ
お疲れさまでした。今回は、流通チャネルと物流という単元を確認いたしました。
流通業界に関係するお仕事をされている方にとっては、既知の内容ばかりだったかとは思いますが、試験で問われることを意識した丁寧なインプットを行う必要があるのかもしれません。
また、初見の方にとっても難解な箇所は少なく、すんなりと理解できる内容だったのではないでしょうか。
今回の記事で確認した政策、類型、理論については、それぞれのメリットやデメリットを比較しながら、横断的にマスターすることで効率的に学習を進められるかと思います。
効率的な学習で中小企業診断士試験を攻略しちゃいましょう!