国内で唯一のコンサルティング業務に関する国家資格で、いわゆる難関資格の一つとされる中小企業診断士。
「挑戦してみたいけど、その前にどれくらい難しい試験なのか知っておきたい」という方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、 中小企業診断士試験の難易度について、他の国家資格と比較も踏まえながら解説したいと思います。
「何年たっても合格できない」という人もいれば、「数ヶ月で合格した」という人もいます。
受験生一人一人の置かれている状況によっても難易度は全く異なりますので、参考データの一つとして捉えていただけると幸いです。
では、早速見ていきましょう!
中小企業診断士の合格率はどのくらい?
中小企業診断士試験の合格率を表す時によく使われる数字が、1次試験合格率と2次試験合格率を掛け合わせた値です。
直近10年間では、合格率は3〜6%付近を推移しています。
年度 | 1次試験合格率 | 2次試験合格率 | 合計合格率 |
平成21年度 | 24.1% | 17.8% | 4.3% |
平成22年度 | 15.9% | 19.5% | 3.1% |
平成23年度 | 16.4% | 19.7% | 3.2% |
平成24年度 | 23.5% | 25.0% | 5.8% |
平成25年度 | 21.7% | 18.5% | 4.0% |
平成26年度 | 23.2% | 24.3% | 5.6% |
平成27年度 | 26.0% | 19.1% | 4.9% |
平成28年度 | 17.7% | 19.2% | 3.3% |
平成29年度 | 21.7% | 19.4% | 4.2% |
平成30年度 | 23.5% | 18.8% | 4.4% |
令和元年度 | 30.2% | 18.3% | 5.5% |
出典:中小企業診断士協会
最新の令和元年度に関しては、1次試験合格率が極めて高かったのが特徴といえます。
中小企業診断士は1次試験と2次試験から成っていますが、それぞれの採点方法や合否判断は異なる性質を持っています。
1次試験の合格基準は、「総点数が60%以上で、かつ1科目でも40%未満の科目がないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とする」とされており、いわゆる絶対評価的な方法です。
一方の2次試験の合格基準も、「総点数の60%以上であり、かつ1科目でも40%未満の科目がないこと」とされており1次試験と殆ど同じ内容です。
ですが、一般的に2次試験は相対評価だといわれており、ざっくり上位20%の人が合格する試験と考えて良いでしょう。
事実、1次試験と比べて2次試験の合格率はばらつきが少ないのが上記の表からも確認いただけるかと思います。
他の国家資格の合格率は?7つの資格と比較してみた
さて、続いては中小企業診断士以外の人気国家資格の合格率を確認しましょう。
各資格ごとの試験特性等によって算出根拠が異なっていますので、あくまで参考ベースの数字と捉えてください。
下表によれば、中小企業診断士は、難関国家資格である税理士・公認会計士・弁護士よりも合格率が低いことがわかるかと思います。
※簿記だけは国家資格ではありませんが、人気資格という点では外せないので一応記載してます。
資格名 | 合格率 |
弁護士 | 33.6% |
日商簿記2級 | 27.1% |
日商簿記1級 | 9.8% |
税理士 | 18.1% |
宅地建物取引士 | 17.0% |
公認会計士 | 10.1% |
社会保険労務士 | 6.6% |
中小企業診断士 | 5.5% |
どうでしょう。中小企業診断士だけエゲツナイくらい低いですね(笑)
このような結果からも、中小企業診断士試験は相当難易度が高い資格だと考えられるかと思います。
しかし、合格率が低ければ低いほど難易度が高いのかと言われると、一概にそうは言えないのではないかというのが私の見解です。
合格率一桁が当たり前の中小企業診断士は本当に難しいの?3つの視点から考察
上記で申し上げましたが、合格率が低いと難易度が高い試験と考えられがちですが、合格率と難易度は完全に一致するわけではないと思います。
母数である受験者数が多ければ多いほど、試験レベルの如何に関わらず合格率は低くなるでしょうし、超難関といわれている弁護士資格の合格率を見れば、合格率と難易度が比例しないのは明らかです。
上記の表の合格率がそのまま試験の難易度に直結するのであれば、日商簿記2級は弁護士よりも難しいということになってしまいますからね(笑)
ですから、合格率だけみて「え。。中小企業診断士の難易度ヤバイじゃないか。。受験辞めとこうかな。」となるのではなく、試験の特質なども加味した上で正常に難易度を判断することが大切です。
それでは、中小企業診断士試験の学習範囲の広さや合格基準、試験制度なども総合的にみて、どれくらい難しいのか確認しましょう。
学習範囲の広さ
中小企業診断士試験の大きな特徴は「なんでも勉強する試験」であるということです。
経営学・財務会計学はもちろんのこと、経済学・IT・法律などといった中小企業経営に纏わる多様な分野の勉強が必要になりますので、学習範囲はかなり広いと考えていただいてよいかと思います。
ただし、範囲が広い変わりといっては語弊があるかもしれませんが、一つ一つの論点はそこまで深く突っ込まれることはありません。
幅広く色んな勉強をしたいという方にとっては、それほど難しいとは感じないかもしれないですね。
合格基準
中小企業診断士試験は合格基準が非常に曖昧だと感じます。
1次試験は選択式問題ですし公式解答も公表されるので良いのですが、2次試験に関しては記述問題で、かつ公式解答の発表がありません。
全員の受験生が、自分の解答プロセスが正解なのか間違っているのか、確たる証拠がないまま学習に励むことになります。
勉強法を間違えてしまうと、どれだけ勉強に時間を費やしても全く合格できない、といった結果になる恐れもあります。
合格基準という観点でみれば、中小企業診断士の難易度は高いといえます。
試験制度
1次試験7科目に関しては科目合格制度が設けられています。
1次試験の合格基準である「総得点の60%」に満たなかった場合でも、科目単独で60%を超えているものは、有効期間内の間は受験免除になる、というものです。
科目合格の有効期間は3年なので、例えば今年60%以上取った科目は、来年・再来年は受験不要という扱いになります(再度受けてもOKです)。
一方で有効期間内に資格取得ができなかった場合、再度受験をして60%以上の点を取る必要がでてきます。
そしてもう一つ用意されているのが、1次試験合格に関する制度です。
これも、有効期限内であれば1次試験自体の受験免除ということになるのですが、有効期間はたった2年間です。
今年1次試験に合格した場合は、来年のみ1次試験の受験が不要になります。
逆にいえば、今年・来年と2次試験に失敗した場合は、3年目にまた1次試験からやり直さなければならないということです。
1次試験と2次試験は試験範囲こそ被っているものの、問題へのアプローチは全く異なるので、それぞれ別個で十分な試験対策が求められます。
ですから、再度1次試験を受けなければならなくなるというのは、受験生によって非常に重荷になります。
例えば税理士資格の場合、一度科目合格をすればその科目は以降ずっと受験不要という扱いになるので、残った科目の学習に集中ができるわけですが、中小企業診断士試験は有効期限内の合格ができないと、何度も何度も同じ科目を受けなければならないのです。
いわば振り出しに戻る状態。双六なら致命的です(笑)
「2年以内に合格しなければ1次試験7科目からやり直し」というこの制度は、中小企業診断士の難易度を押し上げている要因ではないかと思います。
まとめ
この記事では、他の国家資格の合格率なども踏まえて、中小企業診断士資格の難易度をみてきました。
合格率が低いというのもそうなんですが、試験範囲の広さや試験制度など総合的にみても、中小企業診断士試験はそれなりに難易度が高いといえるのではないでしょうか。
あくまでも「それなり」と表現したのは、弁護士資格や公認会計士資格のような圧倒的な難しさはないと思うからです。
ある程度の勉強時間を確保し、効率の良い学習ができれば誰でも合格することは可能です。
中小企業診断士の受験を検討している方は是非参考にしていただけると嬉しいです!