今回は企業経営理論におけるブランド戦略について解説していきたいと思います。
ブランドと聞くと、いわゆる高級ブランドを連想される方が多いのではないでしょうか。
また、高級なブランドではなくても、こだわりのブランドやメーカーを好んで選択しているという方も多いはずです。
筆者自身もモノを選ぶ際には、そのブランドに何らかの愛着を感じているというケースが多いです。
そして、そのような愛着を感じるブランドのモノをリピートして買う傾向があることを自覚していますし、愛着が薄れない限りは、指名買い、リピート買いを続けていくだろうと思っています。
これって、企業側の視点に立ってみると、理想的な顧客を獲得できていると思いませんか?
自社ブランドに愛着を感じてくれて、継続的に購入してくれる顧客を抱えていることになります。
また、愛着が強ければ強いほど価格を気にせずに購入してくれますし、リピート頻度も増え、他者に口コミで宣伝してくれたりもします。
つまり、企業にとってはブランドってとても重要なものであるわけです。
一方で、企業が目指すべきブランドイメージを構築するためには正しい戦略が必要不可欠です。
ブランドに関する戦略を理解し、適切な道筋を示してくれる人がいたら有難いですよね。
ここで中小企業診断士の出番となるわけです(笑)
ブランドと中小企業診断士の関係性が確認できたところで、さっそくブランド戦略について確認していきましょう!
目次
そもそもブランドってどんなもの?ブランドの機能を知ろう!
日常生活に馴染み深いブランドですが、そもそもブランドを冠することにはどのような効果、機能があるのでしょうか。
その点を理解していなければ、効果的なブランド構築は叶いませんし、戦略もぼやけたものになってしまいます。
まずはブランドの4つの機能を確認していきましょう。
- 出所表示機能
- 品質表示機能
- 宣伝広告機能
- 資産価値機能
それぞれどういった内容のものか解説していきますね。
いかがでしたか?言われてみれば、なるほど~と感じるものばかりではないでしょうか。
日常生活に溶け込んでいるブランドというものには様々な機能が備わっていることを確認いただけたかと思います。
また、有益な機能を確認することで、ブランド構築の重要性もより認識できたのではないでしょうか。
これほどの機能を備えたブランドを有効に活用しないのはとてももったいないことですよね。
ブランドの付け方にはどんな型があるのか?ブランド採用戦略を確認!
続いて確認するのは、ブランド採用戦略です。
企業は通常、複数の製品やサービスを取り扱っていると思います。
ブランド採用戦略という考え方では、その複数の製品、サービスを以下の図1にあるように「標的市場の類似性」と「製品ライン間のイメージや競争地位の類似性」の2軸をベースに区分けし、そのブランドのスタンスを明らかにしていきます。
ブランドのスタンス、冠し方を5つのパターンのいずれかに分類することで、効果的なブランド活用を図っていくというわけです。
それでは、5つのブランドパターンを確認していきましょう。
ブランドパターン①:ファミリーブランド
標的市場と製品ライン間イメージがともに同質なポジションにあるのがファミリーブランドです。
これは異なる製品であっても、統一したブランドを冠して消費者への訴求を図っていくという考え方です。
ターゲットとする市場も取り扱う製品も同質ですから、個々の製品をバラバラに宣伝するよりも、統一されたブランドで発信した方が効果的であるというわけです。
ハンドソープやウェットシート、薬用ハンドジェルを展開するLIONの「キレイキレイ」シリーズ、タブレット端末からノートPC、デスクトップPCを展開するマイクロソフトの「Surface」シリーズがこのファミリーブランドに該当します。
ブランドパターン②:ダブルブランド
標的市場は同質でも製品ライン間イメージが異質となるケースでは、ダブルブランドを採用します。
これはネーミングのとおり2つのブランドを使用するというものです。
ターゲット市場が同じであるため統一したブランドを用いつつも、製品ラインの違いや特徴を訴求するためにもう一つのブランドネームを併せ持つことになります。
「キリン ラガー」、「キリン 一番搾り」、のキリンビールがダブルブランドを用いた事例となります。
ブランドパターン③:ブランド・プラス・グレード
標的市場は異質であるが、製品ライン間イメージが同質となるケースにおいては、ブランド・プラス・グレードを採用します。
製品ラインが同質であることから、統一的なブランドを用いることで訴求効率を高めます。
その一方で標的市場は異質ですので、グレードを付して違いを明確にするというわけです。
小型車に「Aクラス」、中間サイズには「Cクラス」、フラッグシップモデルには「Sクラス」というようにグレードを区分して商品展開を図るメルセデスベンツがブランド・プラス・グレードの事例です。
ブランドパターン④:個別ブランド
標的市場、製品ライン間イメージがともに異質であるケースでは個別ブランドを採用します。
そもそも、ターゲットとする市場も取り扱う製品も異なるわけですから、共通のブランドを使用して消費者に訴求する必要がありません。
それぞれの製品で個別にブランドを確立し訴求していくことになります。
コーヒーの「ネスカフェ」、チョコレート菓子の「キットカット」という風に、それぞれのブランドで市場展開しているネスレ社が個別ブランドの事例になります。
ブランドパターン⑤:分割ファミリーブランド
標的市場、製品ライン間イメージの両方の判別が中程度であるときは、製品ライン群を何らかの共通性に応じて区分しそれぞれにブランドを付す、分割ファミリーブランドを採用します。
「ナショナル」、「パナソニック」というブランドを製品の種類により使い分けていた、以前の松下電器産業の事例が分割ファミリーブランドに該当します。
新たなステージに進出するときのブランド戦略とは?4つのブランド戦略を確認!
さて、続いて確認していくのが、新製品を投入する際のブランド戦略の考え方です。
上記の図2にあるように、ブランド名が既存か新規か、製品カテゴリーが既存か新規かのカテゴリーに応じて、4つのブランド戦略に区分されます。一つずつ確認していきましょう。
ライン拡張
既存製品を既存のブランド名で展開していくのがライン拡張戦略です。
風味や色、形、サイズなどのバリエーションを増やすといったことが挙げられます。
ポテトチップスの新フレーバーの発売をイメージして頂けたら宜しいかと思います。
ブランド拡張
新製品を既存のブランド名で展開していくのがブランド拡張戦略です。
すでに確立されたブランドの知名度を新製品の展開に利用します。
日清の「カップヌードルごはん」の事例がイメージしやすいと思います。
既存のカップヌードル市場におけるブランド力を活用して、カップライス市場への進出を図ったわけです。
マルチブランド
既存製品のカテゴリー内に新規ブランドを追加展開するのがマルチブランド戦略です。
いわゆるカニバリズム(共喰い)が起きるというリスクもありますが、ブランドスイッチを図ろうとする消費者を自社に留めるというメリットも期待できます。
マルチブランドの事例としてはスウォッチグループの取り組みが挙げられるでしょう。
カジュアルウォッチである「SWATCH」から高級腕時計の「OMEGA」や「BLANCPAIN」まで、腕時計市場において実に12のブランドを展開しています。
新ブランド
新製品について、新たなブランド名で展開を図るのが新ブランド戦略です。
新製品の展開に既存のブランド名を活用するのはブランド拡張でしたね。
既存のブランド名を活用することがふさわしくないようなケースでは新ブランドで新製品の展開を図ることになります。
まとめ
今回は日常生活においても馴染み深いブランドについて取り上げてきました。
製品やサービス、はたまた企業にとって、顧客の好感を集めるということは収益性の向上のためにも非常に重要です。
好感を集めるためにも、今回確認したブランドの諸機能を活用することが有効となります。
ブランドに関する諸理論、戦略をマスターして中小企業診断士試験を攻略しましょう!