中小企業診断士試験の1次試験では全7科目を勉強することになりますが、本日はそのうちの1つ、「企業経営理論」についての概要や効果的な勉強方法、合格レベルに達するまで必要とされる勉強時間の目安、その他試験に有用な情報などを解説いたします。
ちなみに筆者は令和元年度中小企業診断士試験の合格者で、私の経験則も踏まえてお話をさせていただこうと思います。
それでは、一緒に見ていきましょう!
目次
企業経営理論で問われる内容はどんなこと?
まずは企業経営理論で問われる内容について、試験実施機関である中小企業診断協会が発行する試験案内を確認していきます。
試験案内中の試験科目設置の目的と内容において、以下の3つの大項目と大項目にぶら下がる形で計23個の詳細項目が挙げられています。
シンプルにまとめると、企業経営理論で問われる内容とは、資金面以外の経営に関する理論であり、企業経営をする上で知っていると役立つ理論ともいえるかと思います。
イメージを掴むための一例を挙げますと、他社と競争を展開するにあたっては、業界内での自社ポジションの位置によって、最適な戦略が異なるということがいわれています。
業界内で最も高いシェアを持つリーダー企業であれば、他社が差別化に成功した画期的な新商品をリリースした場合、自社の規模の大きさを利用して画期的な新商品を真似ることで、差別化の効果を無くすという戦略が適しています。
一方で、業界シェアトップのリーダーを追随するチャレンジャー企業が採用すべき戦略としては、リーダーが真似できないような差別化を図ることが重要な戦略となります。
また、ニッチなマーケット(隙間市場)でミニリーダーのポジションを確立しているニッチャーの戦略としては、市場規模の拡大を志向するのではなく、隙間市場内で地位を確立し続け、競争を回避するという戦略が適していますし、市場シェアトップは狙わずに市場で低~中価格帯を求める顧客層を相手に、適正な利潤を得ることを目的とする戦略がフォロワーにとっては適しています。
以上の内容が「競争戦略」で問われる内容です。
企業経営を行う際に役立つ知識というイメージが掴んでいただけるかと思います。
なお、この科目は二次記述式試験と関連があります。
二次試験の事例Ⅰ(組織・人事)では組織論で学習する内容が問われますし、事例Ⅱ(マーケティング・流通)では経営戦略論、マーケティング論で学習する内容が問われます。
この科目で学ぶ知識は、1次試験、2次試験の両方で必要になります。
しっかりと理解し、多肢択一形式の1次試験対策だけではなく、記述形式である2次試験への対応も見据えた取り組みを進めることが大切です。
企業経営理論の科目で点数を稼げる人の特徴
では、企業経営理論で点数が稼げるタイプを分析していきます。
1次試験では、一部の科目において他の資格等を保有することによる試験免除制度が設けられていますが、企業経営理論に関しては科目免除制度が認められていません。
そういった意味では、最初から明確なアドバンテージを有する対象者はいないと考えられます。
しかし、スタートラインは一緒でも、学習を進めていく中で差が生じやすい科目であると筆者は考えています。
筆者が思うこの科目で点数が稼ぎやすいタイプは以下の方々です。
以上の3タイプです。
もう少し掘り下げてみましょう。
①マーケティングに関連する業務経験をお持ちの方
マーケティングに関連する業務に携わった経験をお持ちの方は、マーケティング論で問われる内容に関連する経験をお持ちであると推察します。経験を有することは学習を進める上で絶対的に有利です。
②マネジメント関連の書籍を好んで読まれている方
マネジメント関連書籍を好んで読まれる方が有利なのは、前提となる知識や理論が多少なりとも備わっていると考えるからです。経験を有することが有利であるということと同様の理由です。
③論理的思考力が高い方
論理的思考力が高い方は、企業経営における理論を理解していく上で有利になると思います。
この中で、筆者が最も伸びしろがあると考えるのは③の論理的思考力が高い方です。
というのも、企業経営理論で学習する内容は暗記で覚えるよりも、理解し納得することで身に付く類の内容が多いと感じるからです。
企業経営理論は、科目免除を認められる圧倒的なアドバンテージを持った勝者が存在しません。
また、この科目で得た知識は2次試験でも問われるため重要科目の一つでもあります。
論理的な思考を習慣付けて、この科目を攻略しましょう。
企業経営理論のオススメの勉強法!
企業経営理論のオススメの勉強方法ですが、筆者の場合は記憶に徹するのではなく、自身の経験と結びつけながら、経営理論を自分の中に染み込ませることを意識して学習を進めました。
例えば、自身の仕事上の経験の中でモチベーションが高まるとき、反対に低下するときの状況にテキストの組織論に書かれているモチベーション管理に関する理論を当てはめることで理解を深めていました。
「こんな施策を採っていたらモチベーションが低下するに決まってるだろ!」という経験は、優秀なビジネスパーソンの皆様には心当たりがあろうかと思います(笑)
その悔しさをバネに、その経験を論理的に説明できるようにするのです。
そうすることで理解が深まりますし、忘れにくいです。
マーケティング論においても、自身が消費者であればどのような意思決定をするかという視点から逆算することで理解が深まります。
論理的思考力を鍛えつつ、企業経営理論の理解を深めつつ、そんな一石二鳥を狙った学習方針をお勧めします。
企業経営理論をマスターするのに必要な勉強時間は?
以上を踏まえ、企業経営理論をマスターするのに必要な勉強時間を検証いたします。
筆者自身の勉強に費やした時間はおおよそ180時間といったところでしょうか。
1次試験の7科目に費やした総時間は900時間でしたので、最も多くの時間を費やした科目の一つとなります。
また、この科目は経営コンサルタントというイメージに直結する学習内容でしたので、好きな科目でした。
長い勉強時間を確保することで苦痛を感じることはなかったと記憶しています。
企業経営理論についてのまとめ
この学習を通じて筆者が感じたことは、経営学・理論というのは社会科学であるということです。
「当たり前のことを言うな!」とお叱りを受けそうですが、メディアに取り上げられるような話題の経営者の言動から、ある種の感覚的な才覚を持つことが企業経営に必要な要素であるというイメージを持っていたように思います。
経営が成功するかしないかは、その経営者の才覚次第という考え方がメディアの伝え方を通じて勝手に自分の中で形成されていたといいますか。
しかし、企業経営理論を学んだことで、経営というのは科学的に体系化されていることを実感しましたし、経営をサイエンスとして捉えるように変化したように感じます。
考えてみると、診断士試験の学習前後で最も変化や成長を感じるのは、企業経営理論を学んだことによる経営というものへの考え方のようにも思えます。
経営コンサルタントの国家資格と紹介されることも多い中小企業診断士ですが、経営コンサルタントのイメージにストライクな学習内容である企業経営理論。
論理的思考力の強化と企業経営理論の理解を同時に進めて、試験合格を勝ち取りましょう!
なお、当サイトでは他の科目について解説した記事や効率良く学習を進められる科目順についてまとめた記事なども取りそろえておりますので、ぜひ併せてご覧下さい^^