中小企業診断士とは、日本版MBAとも言われている経営コンサルタント唯一の国家資格です。
「中小企業診断士って言葉は知ってるけど実際どんなことができるの?」
「これから中小企業診断士を目指したいけど、勉強を始める前にどんなことができる資格か再認識しておきたい」
こういった方に向けて、なるべくわかりやすく中小企業診断士について解説してみました。
ちなみに、中小企業診断士の二次試験で記述問題を解く際には、多面的に物事を考え切り口を見出す必要がありますので、この記事では中小企業診断士で「できるようになること」の切り口を制度面と能力面の2つの観点から解説していきたいと思います。
是非参考にしてみて下さい!
観点その1:制度面でできるようになること
制度面とはすごく端的に申し上げると「中小企業診断士資格を保持していることで何か優遇される仕組みはあるか?」ということです。
あまりにも有名な話のため言うまでもないかもしれませんが、中小企業診断士に独占業務は一切ありません。
もしかしたらこれを知って他の資格に比べて取得に対するモチベーションが下がってしまった人もいるかもしれません。
しかし実は、「一切ない」というのは正しい表現ではなく、実質的に独占できる業務は存在しています。
それは、地方自治体などの公共機関から経営診断を依頼される公的業務です。
公的業務とは、国や地方自治体の以下のような公的機関から委託されて経営相談業務を行うものです。
これらの中で多い業務内容は「窓口相談」や「専門家派遣」などです。
順番に詳しくみていきましょう。
窓口相談
「窓口相談」は、公的機関に設けられた中小企業の経営者や起業家向けに相談窓口で経営相談員として相談にあたる業務です。
週に1日や2日、定期的に上記で挙げたような公的機関に出勤して、窓口に座って相談に対応することになるのですが、窓口には経営に関するさまざまな種類の相談が寄せられます。
例を挙げてみましょう。
などなど、上記で挙げたもの以外にも非常に多種多様な相談があります。
中小企業診断士はどちらかというと「狭く深く」というよりも「広く浅く」色々な分野のことを学習するため、相談内容もそれだけ多岐に渡りますし、それだけ広範囲に渡る知識を持っていなければなりません。
中小企業診断士として学習したことを活用しながら、広く色々な問題に対処することが求められます。
専門家派遣
「専門家派遣」は、中小企業診断士が企業を訪問して支援を行うものです。
専門家派遣業務は、中小企業診断士が公的機関に専門家として登録を行い、案件があれば申し込んだ中小企業を訪問して支援を行います。
この業務を行うことができるのは中小企業診断士資格を持っている人間だけなので、これは「実質独占業務」といえるでしょう。
しかし、この公的業務はかなり属人的に公的機関から依頼されることが多いようで、それなりに中小企業診断士仲間や自治体など公的機関との人脈を持っていなければ、経営相談員になることは容易ではないのかもしれません。
観点その2:能力面でできるようになること
制度として独占業務がないことなど、中小企業診断士資格を取得しても優遇があまりないことが分かってしまい肩を落としている方がいるかもしれません。
しかし、実は業務を独占しているかどうかは大きな問題ではありません。
中小企業診断士を取得することの最大のメリットは自分自身の能力が格段に向上することです。
以下で具体的にどんな能力が向上するのかを書いていきます。
広範囲に及ぶ知識力
中小企業診断士は1次試験において以下の7つの科目を受験しなければいけません。
これらの科目の合計得点が全体の60%以上かつ、1科目でも40点を下回ってはいけないというラインを超えられなければ合格することはできません。
つまり、1科目だけの偏った知識だけでは絶対に合格することはできません。
そして、各科目にあまり重複した部分がないため幅広い知識を学習している必要があるのです。
恐らく一次試験を合格できるレベルに到達する頃には、一般的な会社員のライバルよりもビジネスマンとして有益である多くの知識を得ている状態になっていると思われます。
深みのある思考力
中小企業診断士試験の形式は、一次試験がマークシート、二次試験が論述形式となります。
二次試験の論述形式だけではなく、一次試験のマークシートも含めてかなりの思考力が必要となります。
一次試験はマークシート試験でありながらも、知識の暗記だけではない思考力が求められ、特に「企業経営理論」「運営・管理」においては顕著です。
毎年同じ単元が出題されているはずではあるのですが、問題文の言い回しや選択肢の絶妙な表現力に頭を悩ませることになります。
二次試験においては、一次試験で得た知識を活用して事例別に各企業への分析内容や助言内容を記述することになります。
当然のことながら、決まりきった知識を暗記しているだけでは二次試験で解答を組み立てることができません。
論述であるからこそ、深みのある思考力が必要であり、磨かれていくことになります。
柔軟な対応力
一次試験においては、毎年いわゆる「鬼科目(苦笑)」と言われる科目が存在すると言われています。
どういう意味かというと、テキストで学んだ内容だけではどうやっても40点以上にたどり着くことができないような問題ばかりが出題される科目が、毎年1科目以上組み込まれるということです。
噂によると、2017年と2018年の「経営法務」は司法試験に受かった方でも合格点間際となるくらい困難な問題が出題されたようです。
しかし、こんな科目が組み込まれていたとしても、「これらの問題は自分以外の受験生もできないに違いない」と把握し、自分ができる部分に徹底的に集中する柔軟な対応力が必要です。
実は、鬼科目が含まれているのはこのような対応力を求められているのではないかと考えられます。
ちなみに、2018年度の経営法務はあまりにも難しかったことを採点者側が認めたのか、全員が平等に8点ずつアップされて点数を計算される結果となりました。こんなケースはかなりレアですがね。
また、二次試験においても通常の受験生が絶対に勉強していないような分野のキーワードが設問に織り込まれているなど、受験生のパニックを狙っているような問題が出題されることがしばしばあります。
そんな時でも慌てずにその言葉から推測される言葉などを考え、作問者が求めている解答が何であるのかを導き出す対応力が必要となります。
キレイ、丁寧な文章力
これは二次試験のみのお話となりますが、前述の通り二次試験は論述形式の試験です。
そのため、解答は自分で言葉を組み合わせながら作り上げる必要があります。
一説によれば、二次試験はキーワードでの採点となるため、あまり文章力は重要ではないとの噂もあります。
しかしながら、見やすい文章を書くことによって、他人ならば見落とされてしまったキーワードが採点者に拾われて加点になることも考えられますので、きれいで丁寧な文章を作るということは非常に重要です。
こうして試験に取り組むにあたり、文章力も磨かれていくというわけです。
無駄のない計画力
中小企業診断士試験において、二次試験まで合格をする方はおおよそスケジュール管理が徹底されています。
試験合格のシナリオを考えることによって、計画性を持った勉強ができるようになります。
また、中小企業診断士試験は前述の通り一次試験でも二次試験でも見たことのないような問題が出題される資格試験です。
しかし、その反面誰でも解答ができるような基本的な問題も出題されます。
ここで重要なのは「誰もが解けない問題を解けるようになる能力」ではなく、「誰でも解ける問題を完璧に解けるようになる能力」です。
計画的に勉強を続けることによって、枝葉である難問には目を向ける必要がないということに気づかれると思いますし、無駄のない計画を立てることの重要性もお分かりいただけるのではないかと思います。
中小企業診断士ができることまとめ
ここまで、中小企業診断士とはどんなことができる資格なのかを解説してきました。
上でも申し上げたとおり、中小企業診断士資格を取得することによって、制度面でできることと能力面でできるようになることがあります。
制度面では独占業務というものはありませんが、実質的に独占業務となり得る仕事も存在しますし、自らのスキルアップも大幅に見込める魅力的な資格です。
様々な能力を得られることにより、世の中の中小企業診断士は多くの企業と正対して適切な助言を与えることができる存在となっています。
この記事で、少しでも皆様の資格への理解につながっておりましたら大変幸いです!