今回の記事では、財務・会計で問われることになる「経営分析」の分野を取り上げていきたいと思います。
中小企業診断士試験を攻略するためには、財務・会計は最も重点的に取り組まなければならない科目であると筆者は考えています。
その中でも、今回取り上げる経営分析に関しては、1次試験はもちろん2次筆記試験においても確実に出題される分野となっています。
また、決算書類を読み解いてその企業の強みや弱み、財政状況を分析したりといった、経営コンサルタントとして知っておかなければいけない知識がふんだんに詰まった学習分野でもあります。
この記事を通じて、経営分析の基本をマスターして頂き、中小企業診断士試験の攻略にお役立ていただければと思います!
【経営比率分析】収益性・安全性・効率性について確認!
経営分析とは、財務諸表の数値を用いて計算・分析し、企業の収益性や支払能力等を評価判定するための技法をいいます。
評価判定する際には収益性、安全性、効率性の3つの観点から判定することになり、それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。
評価判定時の観点 | 特徴 |
収益性 | 企業の収益獲得能力を分析 |
安全性 | 企業の支払能力や財務面での安全性を分析 |
効率性 | 資本(資産)の使用効率の分析 |
言葉の意味そのままですから、3つの観点について大まかなイメージは掴んでいただけるかと思います。
次章から、3つの観点それぞれの分析手法について詳細に確認していきます。
収益性を示す指標にはどんなものがある?
収益性分析では、企業の収益獲得能力を分析します。
代表的な指標である総資本事業利益率(ROA : Return On Assets)と自己資本利益率(ROE : Return On Equity)についてご紹介します。それぞれ以下の数式により算出していきます。
事業利益=営業利益+受取利息・配当金
総資本=貸借対照表にある負債と純資産の合計額
当期純利益=損益計算書にある当期純利益
自己資本=貸借対照表にある純資産
これらの数値は高い方が望ましいです。
また、いずれの数値もパーセンテージで求めますので、必ずしも売上規模が大きい大企業の数値が高くなるとは限りません。
少ない投下資本で収益を獲得している企業の方が良好な数値となりますし、事業規模の異なる企業間で比較することも可能となっています。
以上は資本に対する収益獲得能力を計る指標ですが、以下にご紹介する指標はちょっと違った視点から収益性を計っています。まずは数式を確認しましょう。
言い換えると、商品やサービスがどれほどの利益を生み出しているのかを表しています。
こちらも数値が高いと利益率が高く良好と判断しますし、売上高が大きくても手元に残る利益が少なければ数値は低くなってしまいますので、削減すべき費用がないかといった分析に繋がっていきます。
安全性を示す指標にはどんなものがある?
次に、安全性を示す指標を確認していきます。
安全性を分析する際には以下の3つの種類に基づいた分析を行います。
安全性分析の種類 | 代表的な指標 |
短期安全性 |
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長期安全性 |
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資本調達構造 |
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短期安全性分析とは、短期的資金面の安全性を分析するものです。
以下に代表的な指標である流動比率と当座比率の数式をご紹介します。
当座比率(%)=当座資産/流動負債×100
当座資産=現預金+受取手形+売掛金+有価証券
以下、図1を用いて説明します。
流動資産または当座資産というのは、流動性の高い現預金、またはすぐに現預金化できる資産のことです。
一方、流動負債とは短期的に支払わないといけない負債のことをいいます。
流動負債よりも流動資産の方が多いケースでは、負債の支払いが滞るような事態には陥りません。
一方で、流動負債の方が大きいケースだと負債の支払いが滞ることが想定されます。
企業が倒産するのは支払いが滞ってしまい、資金繰りが立ち行かなくなったときです。
そのような意味でも、この流動比率(当座比率)というのは企業の存続可能性を大きく左右する非常に重要なものであり、100%以上の数値が望まれる指標です。
続いて、長期安全性の指標である固定長期適合率を確認していきます。
固定長期適合率の分子は固定資産で、これを自己資本と固定負債の合計額で割って算出します。
固定資産というのは長期に渡って保有、運用、活用される資産といえます。
この固定資産の調達が流動負債で賄われているのは望ましくないですよね。
返済期間が長期に猶予された固定負債、または自己資本で調達されているべきです。
以下の図2で確認頂けるように、固定負債と自己資本の合計額の範囲内で固定資産を調達できているのが理想となりますので、固定長期適合率は100%以下であることが望まれます。
続いて資本調達構造の分析指標として、自己資本比率を確認していきましょう。数式は以下のとおりです。
総資本に占める自己資本の割合となりますので、数値が高ければ総資本に占める自己資本の比率が高いということになりますし、低ければ総資本における自己資本の比率が低い、言い換えると負債により賄われている比率が高いということになります。
自己資本比率は高い方が安全性の面では望ましいといえますが、ある事業の収益率とその投資にかかる利子率を比較したときに収益率が一定規模上回っていれば、負債を抱えてでも投資した方が合理的といえますので、自己資本比率が常に高くあるべきとはいえない部分もあります。
50%を超えていれば、負債を帳消しにする余力を蓄えているといえますので、超優良企業といえるのかもしれませんね。
効率性を示す指標にどんなものがある?
最後に効率性分析手法を確認していきます。
効率性分析とは、資本(資産)の使用効率の分析手法となります。
代表的な指標である有形固定資産回転率を用いて確認していきましょう。数式は以下の通りです。
単位は回で表され、回数が多いことが望まれます。
有形固定資産を用いてどれだけ売上高に貢献できたかを示していますので、資産の効率性を表しています。
例えば、この数値が同業他社よりも低く、老朽化した機械を使用している工場であれば、設備投資を実施することで有形固定資産回転率を向上させて、業績アップを図ることが期待できますよね。
もう一つ代表的な効率性指標を確認してみましょう。売上債権回転率で数式は以下のとおりです。
この数値が高いということは、分子である売上高は高く、一方で分母である売掛金は低いということになりますので、売上債権の回収効率性が高いということを意味し、数値は高い方が望ましいです。
この数値が低く、短期借入金の金額が大きいのであれば、売掛金の回収効率を高めることによって、短期借入金の利息負担を軽減できますね。
合わせてこちらも確認しておきましょう。
こちらは売上債権回転率の分子と分母をくるっと逆転させたものが算出式となり、売上債権を回収するのに要する日数や月数を表す指標となります。
当然ながら、売掛の回収期間は短い方が望ましいですから、数値は低いことが望まれます。
まとめ
今回の記事では経営比率分析を確認いたしました。
この分野は、いかにも中小企業診断士らしいというか、経営コンサルタントらしいというか…、筆者は非常に好きな分野でした。
財務諸表から状況を分析して課題を抽出するのって、なんだかカッコよくないですか?(笑)
一流の経営コンサルタントになったつもりで、楽しみながら学習を進めて頂ければ習得スピードも向上するのではないかと思いますので、ぜひワクワクした気持ちで取り組んでいただきたいですね!