これから中小企業診断士の資格取得を目指そうとお考えの方の中には、
- 中小企業診断士の勉強に簿記は必要ない?
- 試験科目の「財務会計」は簿記何級レベルなんだろう?
という疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、上記のような内容の他、「簿記とのダブルライセンスは有効なのか?」「簿記1級とどっちを取るべき?」といった内容にも触れていきます。
ぜひ参考にして下さい!
この記事は中小企業診断士と日商簿記2級を保有している者が執筆しております
目次
中小企業診断士の勉強に簿記は必要ない3つの理由
まず、結論から申し上げると、財務会計対策のために簿記を勉強する必要性は高くありません。その理由は以下の3つです。
- 財務会計の出題範囲をカバーしきれない
- 簿記では科目免除を受けられない
- 簿記資格を取得するためにかなりの勉強時間を要する
順番に詳しく解説していきますね。
財務会計の出題範囲をカバーしきれない
理由の1つ目として挙げられるのは、財務会計の出題範囲をカバーしきれないという点です。
財務会計と簿記の出題範囲がどれだけ重複しているのか見てみましょう。
出題範囲 | 2級範囲 | 1級範囲 |
簿記の基礎 | 〇 | 〇 |
企業会計の基礎 | 〇 | 〇 |
原価計算 | 〇 | 〇 |
経営分析 | - | - |
利益と資金の管理 | - | - |
キャッシュフロー(CF) | - | 〇 |
資金調達と配当政策 | - | 〇 |
投資決定 | - | 〇 |
証券投資論 | - | 〇 |
企業価値 | - | - |
デリバティブとリスク管理 | - | 〇 |
その他財務・会計に関する事項 | 〇 | 〇 |
ご覧の通り、簿記1級はそれなりに出題範囲が被っている部分もありますが、簿記2級に至っては半分にも満たないカバー率です。
財務会計の攻略に一定の簿記知識は必要とは思いますが、全ての試験範囲をカバーできない簿記資格を敢えて取得することは、そこまでメリットが大きくないと考えます。
簿記では科目免除を受けられない
ほとんどの方がご存じだと思いますが、中小企業診断士1次試験には科目合格制度が設けられています。
ただ、残念ながら簿記資格に合格しても科目免除の恩恵を受けることが出来ません。それがたとえ簿記1級であってもです。
財務会計の科目免除を受けられるのは、公認会計士や税理士といった、更に難易度の高い資格を保持している方のみ。
前述した通り、簿記では出題範囲もイマイチカバーしきれないのも理由としてあるでしょうね。
簿記資格を取得するためにかなりの勉強時間を要する
一般的に中小企業診断士の資格取得のために必要な勉強時間はおよそ1,000時間程度と言われており、1次試験の各科目はそれぞれ100~200時間程度必要です。
一方で、簿記資格の一般的な学習時間は簿記2級でおよそ200時間、簿記1級では500時間以上が必要とされています。
簿記では財務会計の試験範囲を全てカバーできない上に、合格を目指すとなるとこれだけの勉強時間が必要になるため、かなり遠回りしてしまう結果になるでしょう。
筆者自身も簿記2級を独学で勉強しましたが、およそ3ヶ月間毎日2〜3時間程度時間を費やしましたので、200時間程度の時間がかかりました
既に簿記資格を持っているのであればアドバンテージにはなりますが、診断士の勉強をする前に新たに簿記を勉強するというのはおすすめしません。
中小企業診断士の「財務会計」は簿記何級レベル?
中小企業診断士試験の財務会計では、簿記という科目が直接的に出題されるわけではありませんので一概に比較はできませんが、基本的な問題は簿記2級レベル相当が大半を占めていると言えます。
ただ、両資格試験はそもそも求められている能力が異なる点は注意しておかなくてはなりません。
ざっくり分けると、それぞれ以下のような能力が必要になります。
- 中小企業診断士→財務諸表を読み解き分析する経営コンサルタントとしての能力
- 簿記→経理職として財務諸表を作成する能力
このように、そもそも求められるものが違うわけです。
専門的な仕訳や複雑な計算が求められる簿記1級レベルの知識は中小企業診断士の試験では必要とされていません。
従って中小企業診断士の「財務会計」は簿記1級レベルではなく、概ね簿記2級レベルと言えるでしょう。
中小企業診断士と簿記のダブルライセンスは相性良い?
近年、2つの資格を保有するダブルライセンスへの関心も高まっており、様々な資格を保有するビジネスパーソンが増加していますが、中小企業診断士と簿記のダブルライセンスは相性がいいのでしょうか。
私の結論としては、相性は悪くはないが、あまりおすすめはしません。
下記の2つのケースで理由を説明します。
- 経営コンサルタントとして独立開業する場合
- 企業内中小企業診断士の場合
経営コンサルタントとして独立開業する場合
中小企業診断士は経営コンサルタントとしての唯一の国家資格であり、資格取得後に経営コンサルタントとして独立開業するケースが多くみられます。
一方で、簿記は経理職として財務諸表を作成する能力が求められる資格です。
経営コンサルタントとして経営支援を行う際に、簿記の資格を保有していれば経理関連の支援を行うことが可能です。
ただし一般的な企業は顧問税理士がいることから、経理関連の課題がある場合、顧問税理士に相談するケースが大多数。
従って、経営コンサルタントとしてのシナジー効果はあまり高くありません。
一般的に独占業務を有する、税理士・社会保険労務士・行政書士などの仕業資格を保有しているケースの方がシナジー効果は高いと考えられます。
企業内中小企業診断士の場合
企業に勤務するビジネスパーソンが中小企業診断士を保有し、企業内診断士として活躍するケースも多くあります。
企業内診断士の所属部署としては、一般企業における経営企画職やマーケティング部門、人事部門や経理職等様々なフィールドで活躍が期待されます。
そのような状況の中、簿記とのダブルライセンスを活かせる部門は経理職等に限られるのが実態のようです。
従って、経理のスペシャリストとして極めていきたい方や、経理職として転職したいといった方にとっては相性のいい資格だと思いますが、そうではない方にとってはそこまで相性がいいとは言い切れません。
実際に筆者は中小企業診断士と簿記2級の資格を保有している中で、以下のような転職を経験しています。
①金融機関
↓
②経理財務職(大手メーカー2社)
↓
③金融機関(経営コンサルタント)
経理財務職への転職、経営コンサルタントへの転職どちらにおいても、中小企業診断士の資格保有についてはかなり評価をしてもらった経験があります。
一方で、簿記2級については転職活動で触れられることもありませんでした。
難関資格である簿記1級であれば少しは違ったかもしれませんが、実体験として中小企業診断士と簿記がそこまで相性がいいとは感じませんでした。
なお、当サイトでは中小企業診断士と相性の良い資格をまとめた記事もご用意しておりますので、ご興味がある方はこちらもご覧ください。
診断士と相性の良い資格まとめをチェック!
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【中小企業診断士】ダブルライセンスで相性の良いおすすめ資格5選
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中小企業診断士と簿記1級どっちを取るか迷われている方は...
就職や転職、自身のキャリアアップに向け、難関資格に挑戦しようと考えているが、中小企業診断士と簿記1級どっちを取った方がいいんだろう?と迷われている方もいるのではないでしょうか。
資格取得の目的にもよりますが、結論から申し上げますと、筆者は中小企業診断士を取るべきだと考えています。
中小企業診断士は経営コンサルタントとしての国家資格であり、企業の経営に関する知識を横断的に身に着けることができるため、幅広い業務に応用することが可能。
就職や転職ではどのような職種でも一定のアピールポイントとして働くでしょう。例えば以下のような職種の場合は大きなアピールポイントになります。
- 経営管理職
- 経営企画職
- 財務職
- 経理職
- 経営コンサルタント 等々
一方の簿記1級は、経理スペシャリストとしてキャリアアップを積んでいきたい方や将来的に税理士や公認会計士を目指す方のステップアップの資格としては適しています。
どちらの資格も難関試験として有名ですが、キャリアの幅が広がる中小企業診断士の方が、将来役立つ機会が多いのではないでしょうか。
まとめ
この記事では、中小企業診断士に簿記は必要なのか、また財務会計は簿記何級レベルなのかなどの疑問について、筆者自身の経験談も踏まえて書いてきました。
記事の内容を簡単にまとめると...
- 中小企業診断士を目指すのに簿記から勉強するのは遠回り
- 財務会計は簿記2級レベル相当
- 診断士と簿記のダブルライセンス相性は良くはない
- 診断士と簿記1級、取得に迷ったら診断士
以上のようになります。
中小企業診断士と簿記の試験範囲は一定の重複はあるものの、簿記を取得したからと言って財務会計の科目をマスターできる訳ではありません。
中小企業診断士試験は試験科目が多く、どの科目も効率的に最短距離で勉強し、確実に対策していくことが必要ですから、簿記から勉強するのは遠回りになります。
時間は有限ですので、効率よく合格を目指すことも念頭に置いて勉強をしていきましょう!
なお、効率良く合格を目指すという観点で見ると学習方法は通信講座がおすすめです。
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2023年度試験の合格実績も、1次試験510名、2次試験247名と申し分ありませんので、これから診断士の勉強を始められる方は、スタディングの受講も候補に加えてみてはいかがでしょうか^^
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