今回は、運営管理の一分野である「店舗・商業集積」に関する記事となります。
店舗の立地と店舗内の構造・レイアウトに関する様々な理論や考え方を確認していきます。
実店舗を構える立地にはどれくらいの集客力があるかを知ることで、商売の展開方向や戦略の立て方も違ってくるかと思います。
店舗内における商品の配置レイアウトは売上高に大きな影響を与える要素になっていますから、こういった事柄に関する理論や考え方は、経営コンサルティングを担う中小企業診断士にとって不可欠なものといえます。
今回の記事を通じて、店舗立地、店舗の構造とレイアウトに関する諸理論をまとめてマスターしておきましょう!
目次
商圏の意味と種類を確認しよう!
まずは商圏の意味を確認していきましょう。
商圏とは、ある商業施設を日常的に利用する消費者が所在する地理的な範囲のことをいいます。
別の言い方をすれば、商売の対象となる地理的な範囲のことです。
また、商圏は売上高の割合に応じて以下の3種類に分類されます。
当然ながら商圏は広いほうが望ましいですし、一般的には専門性が高いお店ほど商圏は広くなるといわれます。
世界的に著名な画廊とコンビニエンスストアの商圏を比較して頂ければ想像に難くないでしょう。
商圏分析ツールの内容解説【ライリーの法則】
さて、ここからは商圏分析ツールを確認していきましょう。
まずはライリーの法則です。
2つの都市がその間にある都市から販売額を吸引する割合は、その2つの都市の人口に比例し、距離の2乗に反比例するというものです。よくわかりませんね(笑)
以下の図と数式で確認していきましょう。
数式は以下のとおりです。実際に数字を当てはめて確認していきます。
計算例
あなたの都市の人口:16万人
ライバル都市の人口:1万人
あなたの都市と中間都市の距離:16km
ライバル都市と中間都市の距離:4km
16【万人】/1【万人】 × (4【km】/16【km】)²= 16/1 × 1/16 = 1/1
よって、この条件下では1:1、つまり、あなたの都市とライバル都市は中間都市から
同数の購買力を獲得することになる。
人口が多い都市、距離が近い都市に購買力は吸収されやすく、どちらかというと距離の影響の方がインパクトがデカい!ということを表していることをご確認ください。
商圏分析ツールの内容解説【コンバースの法則】
続いては、コンバースの法則です。
こちらは、大都市とその近くの小都市との間における購買力吸引力を比較するモデルとなります。
一般的に移動圏内に大都市と小都市が存在する場合には、大都市で買い物をする傾向が強くなるでしょう。
この法則に当てはめて考えることで、小都市に出店した場合の見込み販売額に関する情報を取得することができます。
こちらも以下の図と数式で確認していきましょう。また、具体的な計算例も紹介いたしますのでイメージを掴んでみてください。
計算例
大都市の人口:16万人
小都市(ホームタウン)の人口:1万人
大都市と小都市の距離:8km
16【万人】/1【万人】 × (4【慢性因子】/8【km】)² = 16/1 × 1/4 = 4/1
よって、この条件下では4:1、つまり、小都市全体の購買力5のうち、大都市で4、小都市で1の購買が行われることになる。
上記計算例によると、小都市圏内に存在する購買力の80パーセントが大都市で消費されることになります。
小都市圏内に出店を計画するのであれば、小都市圏内に残る20パーセントの購買力を前提とした販売計画や利益計画とすることで、計画と実績との間における乖離を防ぐことができます。
商圏分析ツールの内容解説【ハフモデル】
もう一つ確認しておきましょう。ハフモデルです。
こちらは都市間での比較ではなく、商業施設間での比較モデルとなります。
消費者が商業施設に出向くときには、売り場面積が大きく、距離が近いところを選択するという考えを基本としたものです。
以下の図と数式で確認していきましょう。
距離に抵抗係数:λが掛かっていることの意味を説明します。
距離に抵抗係数を掛けるのは、遠方に買い物に行くのが面倒に感じるということを表しています。
また、この抵抗係数は取り扱う商品(消費者から見たケースでは購買品)によって異なります。
日常的に繰り返し購入する食料品や安価な生活必需品であれば、近くの店舗で購入したいと考えるでしょうから、抵抗係数は大きくなります。
一方、高価かつ頻繁に購入しないような贅沢品は、大きな店舗でたくさんの商品の中から品定めしたいと考えるでしょうから、距離に対する抵抗係数は小さくなります。
数式だけで意味を捉えるのは難しいかもしれませんが、分解して自分の感情に置き換えて考えてあげることで腑に落ちることも多いですし、理解も進むのではないでしょうか。
店舗における各種機能を確認しよう!
さて、商圏分析モデルの確認が済んだところで、今度は店舗設計のお話です。
こちらは日常生活に密接した内容であり、イメージを掴みやすい分野であると思います。
皆さん、スーパーマーケットでの買い物をイメージしながら内容を確認していきましょう。
まずは、店舗施設の機能を確認していきます。普段何気なく買い物に利用している店舗施設には、実は様々な機能があるというお話です。
いかがでしたか?機能というと難しい定義のように捉えがちですが、実体験に当てはめて考えるとありがちな話にも感じられます。
せっかくの実体験をお持ちなのですから、それを有効に活用して理解に繋げていきましょう。
売場レイアウトの基本のキ!
最後に、売場レイアウトの基本的な考え方について少し触れたいと思います。
こちらもスーパーマーケットにおける日常の買い物風景を想像しつつ、実体験と擦り合わせながら確認していきましょう。
売場レイアウトというのは、商品陳列棚や通路、レジなどの配置のことです。
この配置の仕方が売上に影響を与えるのです。
売場レイアウトの設計にあたり重視すべき基本事項を確認していきます。
①客動線を長くとる
まずひとつめ、店内でのお客さんの移動距離を長くとることで、商品に触れる機会を増やします。
商品に触れる機会が増えるということは、それだけ購買の機会が増えるということです。
「そういえば、あれが無くなりそうだったから、買っておこう。」っていう経験、ありますよね。
実はそれって、店舗の戦略に乗せられてしまっているのかもしれませんよ(笑)
動線を長くとるための有効な手法は、目玉商品を店舗の奥に設置することです。
お客さんを店舗の奥に誘導することで、見る予定の無かった商品に触れることになり、買い上げ点数を増やすきっかけが生まれます。
②従業員動線は短くする
続いては先程とは逆です。
客動線を長くすることは重要ですが、従業員の動線は逆に短くなるように工夫することが効率性の面から重要です。
省力化を図り、店舗運営の効率性を高める視点を持つ必要があります。
③売場生産性を向上させる
これは簡単に言うと「売れやすい売場をつくる」ということです。
ある調査によると、最初から買うものを明確に決めて来店するお客さんは1割程度であるとも言われます。
これを信じるのであれば、残りの9割はその場で購買を決定しているわけですから、売場を工夫することで購買を高めることもできるというわけです。
精肉コーナーの脇に新製品の焼き肉のたれが置かれていたりすると、ちょっと気になるあれですよ(笑)
まとめ
今回は商圏と店舗に関するあれこれを確認して参りました。
難解な算式や呼称から一見すると難しいように感じますが、分解して考えるとシンプルな話ばかりです。
また、自身の購買行動にあてはめて考えることで、理解が進みやすい分野でもあります。
自身の経験も有効利用して理解を深めていきましょう。
ただし、くれぐれも買い物のし過ぎにはご注意くださいませ(笑)