中小企業診断士は独占業務がないため足の裏の米粒(食えない資格)などと言われており、独立開業は難しいと思われている方も多いようです。
しかしながら、中小企業診断士は国内唯一の経営コンサルタントの国家資格であり、幅広い知識を有することから非常に広く活躍できるフィールドがあります。
この記事では、中小企業診断士として独立開業しようとする方々のために、独立準備の方法や費用、開業後の仕事内容までまるっと解説したいと思いますので、独立開業をお考えの方はぜひ参考にして下さい!
目次
独立開業までの道のり①:中小企業診断士の資格を取得する
まず当たり前ですが、中小企業診断士の資格を取得するためには試験に合格しなくてはなりません。
試験内容は、1次試験がマークシート形式で7科目、2次試験が筆記4科目と口述となっており、なかなかボリューミーです。
2次の口述試験については遅刻と沈黙さえなければ99%合格すると言われておりますが、1次試験の合格率は毎年約20%、2次筆記試験についても約20%で、診断士試験完全合格となるのは毎年たったの4%前後という非常に狭き門となっています。
まずはこの難関試験を突破しないといけませんので、独立開業云々を考える前に、試験で相当な努力が必要になってきます。
試験の内容については以下の記事にまとめてますので、これから資格取得を目指す方は以下の記事もご覧ください。
試験概要は以下の記事でチェック!
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【ココを見れば全て分かる】中小企業診断士の試験概要(申し込み方法や期間・試験日・合格点等)
中小企業診断士試験の申し込み方法や期間・試験日・合格点等といった、試験を受けるにあたって抑えておきたいポイントをこちらの記事にまとめてみました。 この記事である程度の情報は網羅できていると思いますが、 ...
独立開業までの道のり②:中小企業診断士として登録・中小企業診断協会に所属する
2次試験合格後は、合格から3年以内に以下の2つの方法どちらかを取ることで中小企業診断士として登録することができます。
- 実務補習を15日以上受ける
- 診断実務に15日以上従事する
その後、中小企業診断協会に登録する場合は各都道府県にある中小企業診断協会に所属する必要がありますので、活動拠点となる場所から一番近い協会に所属の申し込みを行いましょう。
東京の場合は支部にも登録が必要になりますのでご注意下さい
なお、中小企業診断協会に所属を申し込む際には入会金や年会費を納めることになりますが、金額は各都道府県の協会ごとに異なります。
入会金5万円+年会費5万円というのが相場にはなりますが、事前に所属を希望する中小企業診断協会に照会して確認しておいた方がいいでしょう。
なお、中小企業診断協会に入会するメリット・デメリットなどは以下の記事でまとめております。
中小企業診断協会入会のメリット・デメリットは以下の記事でチェック!
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中小企業診断協会に入会するメリットとデメリットは?年会費なども詳しく解説
合格後15日以上の実務補習もしくは実務従事を完了することで、いよいよ中小企業診断士になるわけですが、中小企業診断士の資格を有する者だけが入会できる中小企業診断協会というものが存在します。 筆者は、中小 ...
独立開業までの道のり③:事業計画書の作成や開業資金の準備など
事業計画書は必ず作成しておきましょう。
事業計画書とは事業の内容や企業戦略、収益の見込みなどを書面に落とし込んだもので、自分がどういった内容の事業をするのか、何を強みとして動いていくのかといった事が可視化できるため、自分の軸をしっかり持つという意味で有効です。
あと、開業資金の調達をする際などにも事業計画書は必要になります。
開業してから「お金がどこにも借りられなかった。。」とかなったら笑えませんので、開業前に必ず手続きを進めておきましょうね。
事業計画書に決まったフォームはありません。ネットで「事業計画書 書き方」などで調べれば事例もたくさん出てきますので、その中から自分に合ったモノをお探しください
独立開業までの道のり④:開業に必要なものを用意する
開業資金の調達が出来たら、その資金や自己資金を元手に開業に必要なものを準備しておきましょう。
ざっくり以下のようなものが候補になってくるかと思います。
- オフィス(自宅が拠点なら不要)
- パソコンやプリンターなどのOA機器
- デスク等のその他備品
- 自社ホームページ
- 名刺やその他事務用品
事務所に関しては、潤沢な資金がなければ自宅兼オフィスとして構える方も多いです。
賃貸すると固定費がかさむため、開業当初の仕事がまだあまりないうちは結構重荷になるケースがあります。
後々儲けが出てから自宅とは別にオフィスを構えることも出来ますので、この辺りはしっかり判断しておきたいところですね。
その他にも色々と準備すべきものはあると思いますので、ご自身でも開業に際して足りないモノはないか念入りに確認しておいて下さい。
独立開業までの道のり⑤:開業に必要な手続きを行う
開業に必要な手続きは、管轄の税務署と市区町村役場の2か所で行います。
それぞれの場所ごとに必要な手続きをご確認ください。
管轄の税務署【開業届など】
事業を開始したら、開業日から1か月以内に開業届を税務署に提出する必要があります。
納税地の税務署に直接持って行って窓口に提出、もしくは郵送での受付も可能ですが、郵送の場合は不備があった際に何度かやり取りをしなくてはいけないので、窓口で記入方法を確認しながら提出する方が良いのではないかと思います。
郵送の場合は、国税庁のホームページから書類をダウンロードできます。
また、この際に確定申告のための青色申告承認申請書も一緒に提出しておくと後々楽ですね。
従業員を雇う場合は個別に「給与支払事務所等の開設届出書」などの提出も必要となります
市区町村役場【国民年金や国民健康保険】
居住する市区町村役場では、国民年金と国民健康保険の加入手続きをしましょう。
独立することで、今まで会社員の場合は給与から天引きされていた年金や保険料は自ら支払う必要が出てきます。
なお、健康保険は以前勤めていた職場の健康保険を任意で継続することも可能となっています。
中小企業診断士独立開業までの費用を整理
上記で大まかな開業手続きは終了になります。
ここまで出てきた費用をざっとまとめると以下のようになります。
従業員は雇わず、事務所も小さめの部屋を想定
項目 | 概算 |
中小企業診断協会 入会金 | 50,000円 |
中小企業診断協会 年会費 | 50,000円 |
オフィス 敷金 | 100,000円 |
オフィス 家賃(1ヶ月) | 100,000円 |
パソコン | 100,000円 |
プリンター | 30,000円 |
デスク等のその他備品 | 200,000円 |
自社ホームページ | 200,000円 |
名刺やその他事務用品 | 30,000円 |
合計 | 860,000円 |
こうして見ると、大体100万円前後は開業資金として用意しておく必要があることが分かります。
また、ここから当面の運転資金も必要ですので、最低でも300万円は準備しておかないと苦しいのではないでしょうか。
【開業後】中小企業診断士の仕事内容
独立開業してすぐは、もちろんほとんど仕事がない状態からスタートすることになると思いますが、中小企業診断士の開業当初の仕事内容については大きく以下の3つに分類されてくるかと思います。
- 公的業務
- 民間業務
- 企業研修
中小企業診断士の特徴として幅広い知識をまんべんなく保有しているため、もちろん他にも仕事はあるとは思いますが、まずこの3つから入ることが多いようです。
順番に仕事の内容を見ていきましょう。
公的業務
公的業務とは、行政機関や商工会議所・商工会などから委託されて行う業務のことをいいます。主な業務内容は以下の通り。
窓口相談 |
公的機関を訪れた企業が抱える悩みや問題について専門家としてアドバイスを行う業務 |
専門家派遣 |
公的機関に専門家として登録し、案件があれば派遣を求める企業を訪ねる |
セミナー講師 |
学校や企業にて講師として登壇する |
こういった仕事は週に何日か確実に得られるため安定的な収入源になるというメリットもあります。
民間業務
中小企業診断士では一般企業のコンサルティングを「民間業務」と呼ぶことがあります。
コンサルティング業務の内容はさまざまで、以下のようなものが挙げられます。
- 融資支援
- マーケティングのコンサルティング
- 事業計画策定の支援
これらはほんの一部で、まだまだたくさんの民間業務があります。
中小企業診断士として求められる知識が幅広いのも、企業が抱えるあらゆる問題や悩みに対応するためです。
また、企業が抱える課題に対して別の専門家を紹介する調整役(パイプ役)になることもあります。
問題解決に別の専門家の力も必要と判断すれば、両者を上手くつなぐことも重要な業務ですし、こういった業務内容がある側面からも、人脈構築も非常に大切であることがお分かりいただけるでしょう。
企業経営全般にわたる知識を有する中小企業診断士は、誰に相談すればよいのかわからないと感じている経営者や起業家にとって、最初に相談を持ち掛ける総合窓口のような役割を担っています。
企業研修
独立開業した中小企業診断士のなかには、企業研修を行っている人も少なくありません。
専門分野に関わる研修はもちろん、ロジカルシンキングやマネジメントなどのビジネススキルに関わる研修も行っています。
経営に関する多くの知識とそれに基づく論理的な判断が求められる中小企業診断士の働き方から、企業に勤めて学び取れるものは多くあります。
また、企業内の研修のみならず、大学や専門学校などで教鞭を取る仕事に就く方もいます。
独立開業した中小企業診断士として研鑽を積んでいけば、後進に伝えるべき知恵を得ることもあります。
気になる独立開業した場合の年収は?
独立開業した場合の年収は誰もが気になるところだと思います。
皆さん薄々感づかれていると思いますが、正直ピンキリです。
ボリュームゾーンとしては500万円あたりが多いですが、1,000万円以上稼いでいる方も少なくありません。
これは各個人の努力や顧客層にもかなり影響してきますので、
稼ぎたければ頑張れ!という結論になります(笑)
なお、年収については、以下の企業内診断士と独立診断士の年収差をまとめた記事で詳しく解説してますので、気になる方はこちらもぜひご覧ください。
中小企業診断士の年収記事をチェック!
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【中小企業診断士年収の現実】企業内診断士と独立した場合の差はどれくらい?
中小企業診断士は弁護士や公認会計士などのいくつかの士業と異なり独占業務がないため、「食えない資格」と言われてしまうことがあります。 しかし、中小企業診断士は本当に「食えない資格」なのでしょうか? 今回 ...
まとめ
この記事では、中小企業診断士の資格取得から独立開業までの道のりと開業当初の仕事内容について解説してきました。
独立開業する手続き、流れという部分においてはそれほど難しくはありませんが、そもそも毎年合格率が約4%という超絶狭き門である試験を突破しないといけませんので、まずは試験合格に向けて努力をすることが必要不可欠です。
また、試験に合格したあとも、独立開業するためにはそれなりの覚悟とスキルが必要ですし、開業したからといって直ちに稼げるようになるわけではない点にも注意が必要です。
あくまでも資格は相手に安心感を与えるツールであり、真の商品は自身のアイデアであるという点は忘れないようにしましょう!