ご存知の方も多いかもしれませんが、中小企業診断士の資格は一度取得してしまえば永続的に保有できるというものではありません。
資格の有効期限としては新規登録(もしくは前回登録)から5年間となっており、その間に引き続きその能力水準をキープし充実発展させたことの証明として、有効期間内に「知識要件・実務要件」を満たすことが要求されます。
今回は、更新要件の取得方法やそれに掛かる費用について解説していきたいと思います。
中小企業診断士資格の更新要件は?
上述したように、中小企業診断士資格の有効期限は5年と定められ、新規登録(もしくは前回登録)を受けてから5年の有効期間中に、更新要件を満たすことが要求されています。
更新要件は大きく以下の2つに分けられます。
「知識の補充に関する要件(理論ポイント)」を5年間で5回以上
まず、「知識の補充に関する要件」を5年間で5回以上、つまり、理論ポイントを5点以上獲得する方法ですが、大きく以下の3つの方法が挙げられます。
【A】理論政策更新研修の受講
まず、【A】理論政策更新研修の受講ですが、これが一番一般的です。
理論政策更新研修とは、経済産業省に登録した中小企業診断協会などの理論政策更新研修機関が行う1回4時間の更新研修であり、1回受講すれば理論ポイントを1点取得することができます。
この研修を受講するには、中小企業診断協会に入会している場合は1回につき6,300円(税込)の受講料かかります。
中小企業診断協会は強制入会ではなく、任意でありますので、中小企業診断協会に入会していなくても登録更新手続きをすることができますが、中小企業診断協会から丁寧な研修案内が届くわけではないので、自分で情報を探索することになります。
理論政策更新研修については以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひこちらもご覧ください。 皆さんご存知かもしれませんが、中小企業診断士は資格取得後も更新が必要な資格で、登録有効期間は5年間となっております。 そのため、資格取得後も引き続き中小企業診断士としての登録を希望する場合には、5年ご ...
【メリット多数】中小企業診断士の理論政策更新研修についてまるっと解説!
【B】中小企業大学校の支援人材向け研修の受講
【B】中小企業大学校の支援人材向け研修の受講については、中小企業大学校が行っている「中小企業支援担当者向け研修」を受講することで理論ポイントを獲得できるというもの。
研修のテーマは幅広く、基礎的な理論・手法を学習するコースから専門的な分析・実践まで様々で、いずれも3~5日間のコースで実施されています。
【A】理論政策更新研修の受講は1回4時間の講習を受ければ1点ですが、こちらの研修は1回の受講で獲得できる理論ポイントは同様に1点になりますので、時間や日数の関係でそこまで一般的な手法ではありません。
【C】論文審査に合格する
【C】論文審査に合格するに関しては、定められたテーマに対して論文を提出し合格することで、理論ポイントを取得できる制度となっております。
理論政策更新研修の実施機関によって実施されており、各機関によって多少の仕組みは異なりますが、1回の受講で獲得できる理論ポイントはいずれも1点となっています。
論文審査におけるメリットは、会場に行かなくても良い、まとまった時間をとらなくて良いという点で、時間に融通を利かせにくい社会人にとっては非常にありがたい方法になります。
「実務の従事に関する要件(実務ポイント)」を5年間で30点以上
次にご紹介する要件は「実務の従事に関する要件(実務ポイント)」を5年間で30点以上獲得するというものです。
実務の従事要件については、以下のいずれかによってポイントを獲得することができます。
【A】中小企業に対する助言業務
まず1つ目の方法としては、【A】中小企業に対する助言業務が挙げられます。
いわゆるコンサルティング業務を企業に対して行うことになりますので、独立している診断士の方は容易にクリアすることが可能になるでしょう。それが本業ですからね。
一方、日常的にコンサルティング業務をしない企業内中小企業診断士などは、クライアント獲得に少々苦労するかもしれません。
知り合いに紹介してもらう、自らクライアント探しをするなどの行動が必要になってきます。
中小企業に対する助言業務の場合は、クライアントさえ見つけられれば、研修などに参加するわけではないため費用は不要です。
【B】支援機関が行う実務補習・実務従事
先に紹介した中小企業に対する助言業務は、普段から診断士のコンサルティング業務にあたれる方向けでしたが、コンサルティング業務を行うことが少ない企業内診断士の方については【B】支援機関が行う実務補習・実務従事の方法を取るとスムーズだと思います。
実務補習を受講するには中小企業診断協会の各支部へ入会する必要があり、費用が以下のようにかかります。
- 入会費 約50,000円
- 年会費 約50,000円
※入会費、年会費は支部によって異なりますので、"約"としています。
※資格取得後3年以内に入会する必要があります。
で、同時期に申し込みをした中小企業診断士が5~6名でチームを組み、実際の中小企業へコンサルティング業務を行っていく事になります。
実務補習は企業内診断士の方でも比較的参加しやすいように土日を含んだスケジュールになっているのが特徴です。
中小企業診断士の更新手続き
中小企業診断士資格の有効期間は登録日から起算して5年間です。
この有効期間満了日の1か月前から満了日まで受け付けが可能ですが、仮に申請内容に不備があればその対応を満了日までに行う必要があるため、早めに対応しておくことをオススメします。
更新登録に必要な書類は以下の通りです。
中小企業診断士登録証を紛失した場合は、中小企業診断士登録証再交付申請書を添付する必要があります。
なお、中小企業診断士登録申請書は以下の中小企業診断協会ホームページからダウンロードが可能です。
更新手続きを期限内にできそうにない場合の対処方法
中小企業診断士の更新は登録有効期間満了日までに行わなければならず、専門知識補充要件と実務従事要件を充足することなく登録有効期間が過ぎてしまうと登録が失効します。
「更新するの忘れてました。。」と言ったところで、はいそうですかと後から更新できるほど甘いものではないので、しっかり更新時期を把握しておく必要があります。
しかし、更新前に様々な事情により「どうしても更新までに要件が間に合わない!」という場合の緊急手段として、中小企業診断士資格の休止制度が設けられています。
これは資格更新の特例として認められている制度で、5年間の登録有効期間の間に中小企業診断業務休止申請書を提出することで、休止申請をした日から15年を限度として、一時的に休止することができます。
中小企業診断士業務を再開する際には業務再開申請書を提出して再開手続きを行いますが、再開申請日までの3年以内に、理論ポイント5点、実務ポイント15点の取得が必要になります。
まぁ順調に更新していくのが一番ベストではありますが、やむを得ない場合はこういった手段があるということも頭の片隅に置いておくと良いかと思います。
登録更新手続きにかかる費用
更新手続き自体に掛かる費用というのはありませんが、上述した「専門知識の補充要件」と「実務従事要件」を満たすための費用が必要となってきます。
専門知識補充要件にかかる費用としては、理論政策更新研修を受講した場合1回につき6,300円かかりますので、それを5回行わなければいけないという事で合計30,000円強の費用が必要になります。
また、実務従事要件に要する費用については、基本的に独立開業の中小企業診断士であれば、費用は不要です。
実務がそのままポイントに加算されるかたちになりますからね。
一方、日常コンサルティング業務をしない企業内中小企業診断士については、実務補習を活用してポイントを獲得する必要がありますので、受講料がかかります。
この場合、中小企業診断協会に入会しておく必要があるため、未入会の方は会費約50,000円、年会費約50,000円が掛かります。
また実務補習を受講するにも受講料が約150,000円必要です。
以下に、平成31年2月に実施された中小企業診断士実務補習の金額を載せておきますので、参考にして下さい。(税込表記)
コース | テキストをお持ちの方 | テキストをお持ちではない方 |
15日間コース | - | 148,600円 |
5日間コース | 49,300円 | 50,000円 |
以上を踏まえて計算していくと、中小企業診断士資格の更新にかかる費用は5年間トータルで約430,000円になります。
5年間とはいえ、なかなかの出費ですよね(苦笑)
事前にこの分のお金は確保できるように余裕をもって貯蓄しておきたいものです。
まとめ
この記事では、中小企業診断士の更新手続きの方法について、必要費用も踏まえた上で解説をしてきました。
上述したように、更新までの5年間で掛かる費用はトータルで約430,000円というなかなかの高額出費になりますので、事前にどれだけ費用がかかる予定かというのを明確に知っておく事は重要です。
この記事を最後までご覧になった方は、更新にいくらかかるのかという数字はザックリ把握できたかと思いますので、くれぐれも「え。。足りねぇよ。。」とならないように注意して下さいね(笑)
登録更新手続きにはお金もかかるし要件を満たすための実習なども面倒だと感じられるかもしれませんが、ポジティブに考えると、中小企業診断士資格はそれだけ専門知識と実務能力の維持が必要な国家資格であるという証でもあります。
その他、スキルアップや人脈形成の機会ともなるなどのさまざまなメリットもありますので、価値あるステータス中小企業診断士の登録更新手続きを前向きに取り組んでいきたいものです。